平成28年度厚生労働省委託事業 「多機関の協働による包括的相談支援体制に関する調査・研究等事業」報告書
このドキュメントについて
佐藤まみhealthy-sato.iconのインプットメモ
メモ
相談支援包括化推進員とは
概要
相談支援包括化推進員(以下、「推進員」)は、複合的な課題を抱える相談者等を支援する体制構築事業の一部として設けられている役職
役割
相談者等が抱える課題の把握
プランの作成
相談支援機関等との連絡調整
相談支援機関等による支援の実施状況の把握及び支援内容等に関する指導・助言
推進員の配置
推進員の配置人数:全体的には1~3人程度の配置が多い
地域の中の出先(拠点)に配置する場合には、拠点の数に合わせて配置している例もある(例:世田谷区、茅野市)
配置場所
自立相談支援機関や地域包括支援センターのような既存の相談支援機関
既存の相談窓口をワンストップ化してそこに推進員を配置する例(例:山形市の「福祉まるごと相談窓口」)
住民の身近な圏域に置かれた拠点に推進員を配置する例(例:江戸川区の「なごみの家」)など
住民から直接相談を受ける役割だけでなく、相談機関間の調整役として働く例もある(例:伊賀市の福祉相談調整課)
推進員の活動内容
配置のあり方に応じて多様
大きく分けると、以下の2つの方向性が見受けられる
直接的な個別の相談支援への対応を中心にしている場合
関係機関や住民組織等とのネットワークづくり、社会資源開発を中心に動いている場合
相談支援包括化推進会議とは
概要
複合的な課題を抱える相談者への円滑な支援を提供するために定期的に開催される会議
目的
各相談支援機関の業務内容の相互理解促進
具体的な連携方法の確立
福祉ニーズの把握
地域に不足している社会資源の創出
運営について
主に実施主体及び推進員によって運営される。
幅広い機関・団体が参加
地域包括支援センター、社協、医療機関、介護事業者、民生委員・児童委員、自治会・町内会、生活困窮者自立相談支援機関、警察署、法務局(支局)など
メンバーを固定せずテーマに応じて出入り自由としている自治体も存在。
既存の会議体を活用することも可能
具体例: 地域ケア会議、生活支援体制整備事業の協議体、要保護児童対策地域協議会
事例
世田谷区:地域包括支援センターが開催する「地域ケア会議」を推進会議と位置付け、高齢者だけでなく、障害者や子育て家庭などを含む複合化したケースを取り上げる。
伊賀市、有田川町:代表者を中心とした全体会議の下に、実務者会議や個別事例の検討会議を設ける。
ポイント
推進会議の構成を専門職・専門機関のみとするか、住民が参加する場にするか。
個別事例への支援を検討する会議の場合、住民にどこまで情報を共有できるのか。
相談支援の包括化を推進するうえで、住民と専門職の協働のあり方についても今後の具体的な検討が必要。
参加者の重複感や負担感を軽減するため、地域の状況に応じた工夫が必要
目次
1.事例から見る取り組みのポイント ............................................................ 5
2.ヒアリング事例 ............................................................................ 17
2.1 山形市(山形県) .......................................................................... 19
2.2 東海村(茨城県) .......................................................................... 25
2.3 江戸川区(東京都) ..................................................................... 31
2.4 世田谷区(東京都) ..................................................................... 37
2.5 美浜町(福井県) .......................................................................... 43
2.6 茅野市(長野県) .......................................................................... 49
2.7 伊賀市(三重県) .......................................................................... 55
2.8 豊中市(大阪府) .......................................................................... 61
2.9 有田川町(和歌山県) ............................................................... 67
3.アンケート調査結果 ............................................................... 73
3.1 釧路市(北海道) .......................................................................... 75
3.2 矢巾町(岩手県) .......................................................................... 79
3.3 湯沢市(秋田県) .......................................................................... 81
3.4 大潟村(秋田県) .......................................................................... 84
3.5 栃木市(栃木県) .......................................................................... 87
3.6 市貝町(栃木県) .......................................................................... 95
3.7 鴨川市(千葉県) .......................................................................... 98
3.8 妙高市(新潟県) .......................................................................... 99
3.9 氷見市(富山県) ....................................................................... 100
3.10 名張市(三重県) ..................................................................... 110
3.11 琴浦町(鳥取県) ..................................................................... 111
3.12 大牟田市(福岡県) .................................................................. 112
3.13 佐賀市(佐賀県) ..................................................................... 114
3.14 鹿児島県(鹿児島県) ............................................................... 115
3.15 盛岡市(岩手県) ..................................................................... 116
3.16 呉市(広島県) ........................................................................ 127
3.17 長崎市(長崎県) .................................................................... 128
以下ハイライト
(1)包括化を志向した背景やきっかけ、事業実施に至った経緯
取り組みのきっかけとして複数の自治体で共通して挙げられていたのは、窓口に来た相談者だけではなく世帯全体に複数の課題が生じていて、包括的な支援が必要な事例に直面していたことである。
具体的な事例を通して一つの窓口だけでは対応できないことを実感し、対象や制度による縦割りでない相談を受ける仕組みの必要性への認識が高まっていることがうかがえる。 また、そうした必要性の高まりを受けて、体制構築事業の受託を決定する以前から既に包括的な体制づくりを進めていた自治体も多い。
今後、新たに体制構築事業に取り組む自治体においても、既になんらかの形で相談窓口のワンストップ化や相談機関間の連携に取り組まれている場合も考えられる。まずは地域の相談支援機関の機能や連携の状況等を把握し、課題を整理して検討をすすめていくことが必要だろう。
(2)実施主体・委託状況
主体とその割合
平成28年度に構築事業を実施した自治体を見ると、行政が直接事業を実施した自治体が19か所、民間に委託した自治体が7か所、直営と委託の組み合わせで実施した自治体が1か所であった。また、委託先の内訳は社会福祉協議会が最も多く12か所で、その他、社会福祉法人、NPO 法人、医療法人、一般社団法人等が委託先となっている。(㈱日本総合研究所「全世代・全対象型地域包括支援体制の構築に向けた評価指標に関する調査研究(平成 28 年度社会福祉推進事業)」アンケート調査結果より)
直営と委託
行政内部からの連携体制構築には企画調整部門等が担当することで、庁内対応や連携が容易になるメリットがある
しかし、外部から働きかけた方がやりやすいという意見もある
委託先の選定
委託先に関しては、地域包括支援センターを受託していたり、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業を受託しているなど、基盤となる相談支援体制や経験・実績を持っている法人が選定されている例が多い。
体制構築事業とコーディネート機能
体制構築事業では、地域内の相談支援機関のネットワーク化が重要である。
また、体制構築事業では、個別の相談支援の力量だけではなく、地域内の相談支援機関のネットワーク化が重要になるため、行政及び相談支援機関、福祉関係者、さらに住民組織等、幅広い関係者のコーディネート機能を適切に発揮できる機関を中核とすることがポイントになるだろう。
社協が実施した各種相談事業や地域福祉活動から相談支援の必要性を認識し、行政に働きかけて体制構築事業の実施に至った例もある
社協が受託している自治体では、社協がこれまで実施してきた各種相談事業(福祉総合相談、日常生活自立支援事業、権利擁護・成年後見に関する相談、生活福祉資金貸付事業)の取り組みや地域福祉活動を推進するなかで包括的な相談支援の必要性を感じ、社協から行政に働きかけて体制構築事業の実施に至った例も見られた。
たとえば美浜町社協では、従来、集落単位に福祉委員会を組織化しており、福祉委員会を中心とした見守り活動やサロン活動等を通してニーズを把握する仕組みをつくってきた。しかし、住民から社協に寄せられる多様なニーズに対して、対応する制度やサービスが無いという問題に何度もぶつかってきたことから、専門職や制度の側の包括化やニーズに応じた資源開発の仕組みが必要との認識を強め、行政と協議し、体制構築事業の受託に至ったという経緯がある。